PHOTO OLD LENS

SHOOTING REVIEW

New FD 300mm F4Lでの写真

SONY α7II, New FD300mm F4L, 1/160s, F4, ISO200, Photo by Azami Miyayuki

New FD 300mm F4L

望遠 単焦点レンズ

キヤノンといえば赤鉢巻白レンズが高級望遠レンズの代名詞として定着しているメーカーです。 よくスポーツ中継などで見えるカメラマンの多くが使用していることから、一種のあこがれのように見られることがありますね。 赤鉢巻レンズはLレンズと呼ばれ、全体的に贅沢な作りとなっております。
今回ご紹介するのは、赤鉢巻ではありますが、まだ白くなる前の望遠レンズです。 現在のEFマウントでは300mmF4Lは白レンズの入門クラスとして程よい価格帯で提供されていますが、 New FDの時代ままだ黒い鏡筒のレンズでした。
今回のレンズ New FD300mm F4L は1980年ごろに登場した望遠レンズで、300mmとしては高級なサンニッパことF2.8に次ぐ普及ラインとして、開放F4の単焦点レンズです。 開発されたばかりのUDレンズが2枚採用され、蛍石が使用されていないのにもかかわらず色収差がよく修正され、 にじみのない美しい解像感を得ることができ、また操作性にもいろいろな工夫がなされたこだわりのレンズとなっています。
そんなこだわりの望遠Lレンズを画像を交えてご紹介していきましょう。

( 写真/文: Azami Miyayuki )

New FD 300mm F4Lでの写真

SONY α7II, New FD300mm F4L, 1/200s, F5.6, ISO100, Photo by Azami Miyayuki

このレンズは正直なところオールドレンズとは言えない性能で、 開放からの圧倒的な解像度と色収差を感じさせない写りは現代レンズといっても過言ではないレベルです。
トップ画像は最短距離で猫を撮ったものですが、猫の柔らかな毛並みを美しく描写しています。 望遠レンズの最短距離らしい、ものすごいピントの薄さで前後は大きくボケています。 これを利用して背景を大きくぼかし、主役を際立てるような写真を狙っていけますね。 ただしボケ自体の質は少し硬めです。背景が騒がしい場合は被写体と背景の間の距離を取ってボケを大きくした方がいいかもしれません。

2枚めの蓮の作例も、主役を際立たせた作例ですね。 背景は遠くの妙高山なのですが、ボケすぎて空の青を混ぜた美しいグラデーションになっています。 このサイズではわかりませんが、花に付いた小さな蜘蛛も写っています。 シャープさにおいては2400万画素のα7IIくらいでは表現しきれないくらいによく解像していますので、もっと高画素のα7RIIとかでも問題なく利用できるでしょう。

New FD 300mm F4Lでの写真

SONY α7II, New FD300mm F4L, 1/8000s, ISO100, Photo by Azami Miyayuki

逆光時でもパープルフリンジなどがつくことがほとんどなく、コントラストもそれほど低下しないようなので安定して撮影ができます。 現代レンズと比べると落ちるかもしれませんが、RAW現像できる方ならたいてい問題にならないと思います。 上の作例のように太陽を画面内に入れてもゴーストもフレアもほとんど出ていないようです。

このレンズは操作性に優れた点がいくつかあります。
まずその一つとして、リアフォーカシングのためピントリングを回してもレンズの全長が変化しないという点です。 これによって三脚固定時でもピント位置で大きくバランスが変わらないため扱いやすいですし、露出した可動部が少ないことで接触故障もしにくいです。
次にMFで使う上で非常にありがたいのが、「バリピッチフォーカシング」と呼ばれる機構です。 一般的な望遠レンズだと遠距離ほどピントリングのを少し動かしただけでも大きくピントが動きピント合わせが大変になります。 それに対する解決案のような機構がこのバリピッチフォーカシングで、遠くになるほどピントがゆっくり動き、近くほど早く動くというものです。 これにより全撮影距離で安定したピント合わせが可能になっています。
あとは内臓レンズフードの固定機構ですね。 内臓フードは伸ばすだけのものが多く、それらは押したら引っ込んでしまいますが、 このレンズは伸ばし切った後にねじが切ってあり、4分の1回転ほど回すと伸ばし切った状態でロックされます。 金属製でガッチリしているので、前玉をぶつけにくく安心して使用できます。
三脚座は緩めて回したり外すこともできます。

逆に欠点としては前面にレンズフィルタが付けられないことでしょうか。 後ろ側にスロットインフィルタがあるのですが、専用品のようで今の時代に入手するのは難しそうです。

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New FD300mm F4Lの外観

圧倒的性能の望遠レンズ

いかがだったでしょうか。
望遠の入門といえば近年は70-300mmなどの軽量廉価ズームなどが主流ですが、重量1060gで、単焦点望遠としたら割と軽量なレンズです。 参考までにですが、このレンズはデジタルで使用した時同年代のNikonのAi Nikkor ED 300mm F4.5(IF)やAi Nikkor ED 300mm F2.8(IF)、 TELE Tessar T* 3/400などよりもシャープで収差が少ないです。 性能が高すぎて、写りだけ見てたらとてもオールドレンズなんて言えないレンズ。 それなら現代レンズを買えばいいのではないかといわれるかもしれませんが、あえて選ぶ理由もあります。
まず一つとして、現代には300mmクラスの望遠MFレンズはほとんどありません(MILTOLとかPROMINARとかミラーレンズとかありますが)。 MFレンズならではのグリスの効いた精緻なピント合わせは、AF化された現在ではなかなか味わえない感触です。 このフィーリングは撮影の楽しさにも寄与しますし、MF前提の一眼動画撮影をする方にとってはこの造りこまれたMFは大きな武器となるでしょう。 もう一つは写りの割に安価で購入できるということです。 筆者も20000円せず美品を購入しておりますし、見つけさえすれば今どきNewFDレンズを使用する人も少ないでしょうから安く買えることでしょう。

まぁそういうことで結構おすすめの望遠レンズですよ。