Contax | Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 AEG
SONY α7RIII , Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 AEG , 1/5000 , F2.0 , ISO100 , Photo by Azami Miyayuki
準広角 単焦点レンズ
ヤシカコンタックス(コンタックスヤシカ、C/Yとも)、通称ヤシコンは日本のヤシカとドイツのカールツァイスが提携して作った一眼レフカメラブランドです。 カールツァイスのレンズが使えるということで今なお熱狂的なファンが居るヤシコンマウントですが、 今回紹介するレンズはそんなCarl Zeissレンズの中で、筆者が気に入っているCarl Zeiss Distagon T* 1.4/35 AEGをご紹介します。 このレンズは1972年に発表されたレンズで、どうやらヤシコンマウントで唯一研削非球面レンズと近距離補正(フローティング)機構を採用し、 広角にもかかわらず収差を克服しながら限界まで明るさを追求したレンズとして当時世界中のレンズ設計者を驚かせたエピソードが有名だそうです。 今でこそ非球面もフローティング機構も当たり前となりましたが当時は革新的だったみたいですね。
2025年現在、発売当時と変わらないくらいの中古価格(およそ15万円超)がついている高価なレンズですが、 筆者が買った頃はまだオールドレンズが流行する直前くらいで、この半額以下で購入することができました。 Made in West Germanyという時代を感じる製造国表記とガラスと金属の塊といった重量感、フラットな前玉レンズが美しい佇まいが魅力の美しいレンズです。
今回は珍しく天気が良かったので海沿いに何も考えず適当に撮りに行きましたので、いくつか作例を交えてこのレンズを紹介していきましょう。
( 写真/文: Azami Miyayuki )
SONY α7RIII , Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 AEG , 1/8000 , F1.4 , ISO100 , Photo by Azami Miyayuki
今回の写真は冬の日本海側にしては珍しく晴れた日に撮影しました。 開放で撮りましたが、ピント面の画質は当時のレンズにしてはとても良く安定しています。 ツァイスらしく発色もよく、ニコンAi Nikkor 35mm F1.4Sなんかのふわふわの開放と比べ圧倒的にしっかりと写ります。 その一方でピントの合っていないところには距離によっては強烈に色付きをして独特の強烈な印象のボケ感になります。
SONY α7RIII , Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 AEG , 1/6400 , F2.0 , ISO100 , Photo by Azami Miyayuki
このレンズは当時珍しい研削非球面レンズを搭載し、また近距離補正のフローティング機構を備えているため近距離でも安定した描写をします。 海岸に流れ着いていたオレンジ色のカゴを撮ってみましたが鮮やかな発色そのままにきれいに写りました。
弱点が少ないレンズですが一番目立つのは歪曲がそれなりにあることですね。 上の写真でもわかるように水平線が樽型歪曲になっています。
SONY α7RIII , Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 AEG , 1/500 , F4? , ISO100 , Photo by Azami Miyayuki
猫耳が生えた浮きとかも流れ着いていました。 石川県は大陸からよくものが流れてきますが、能登地震のあとということもあり国内外から色々と流れ着いています。 これは少し絞り込みましたが、収差感がない感じのスッキリした描写になりました。 フローティング機構のせいか、距離によって結構描写感が変わるレンズです。
SONY α7RIII , Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 AEG , 1/320 , F5.6 , ISO100 , Photo by Azami Miyayuki
のと里山海道の反対側に向かうトンネルの中から海を撮ってみました。 結構影のトーンもいい感じなのでRAWで撮って加工するのにも良いと思います。
SONY α7RIII , Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 AEG , 1/8000 , F1.4かF2 , ISO100 , Photo by Azami Miyayuki
逆光での撮影です。それほど逆光に強いレンズではないと言われていますがご覧のように目立つゴーストは出ていません。 T* コーティングのおかげか、太陽が構図内入る場合はゴーストやフレアが気になることはあまりないでしょう。 おそらく画角の外から光が入るような場合のほうが苦手かもしれません。その場合は気になったら手などでハレ切りをしてあげましょう。
SONY α7RIII , Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 AEG , 1/800 , ISO100 , Photo by Azami Miyayuki
いろんなものが流れ着いていますね。 ツァイスらしく透明感があり、コントラストがしっかりしているため現代のレンズで撮っていると錯覚することがあります。 実際のところ現代の最新レンズほど周辺まで写るというわけでもなく、かといってオールドレンズと言うにはあまりにも開放から周辺までよく写るという、どっちつかずなところが逆に特徴的なレンズですね。 光学的にも良いですが、このレンズの魅力はグリスの効いたMFフォーカスリングやしっかりと一段ずつ動作する絞りリングの感触など現代のレンズではあまり感じることのなくなった官能的な良さにもあると思います。
SONY α7RIII , Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 AEG , 1/1250 , ISO100 , Photo by Azami Miyayuki
冬の日本海にしては穏やかめですが、しっかりと白波が立っています。 おそらく開放に近いF値で撮ったと思いますが、ピント面は右端から左端まで驚くほどしっかりと写っていますね。 それとやはり立体感のある綺麗な前ボケがいいですね。 後ろボケは色づきやすく比較的曲者ですが、前ボケはとてもすっとした美しいボケになります。
ただしこのレンズ、AEとMMという2つの世代がありますが特にAEの方は絞り羽根形状がかなり特殊でF2からF2.8の間では絞り形状が風車のようになります。 光源とかをぼかして撮る場合は面白い形になるので、是非活用してみてください。
SONY α7RIII , Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 AEG , 1/2000 , F4かF5.6 , ISO100 , Photo by Azami Miyayuki
助手席のフロントガラス越しに撮ったきれいな空です。 日中は天気が良かったですが、雲がかかっている様子からも分かる通りこのあと日が沈んでからは少し雨が降ったようです。
さてさてCarl Zeiss Distagon T* 1.4/35 AEGはいかがでしょうか?
ヤシコンは魅力的なレンズがいっぱいありますが、人気の高いPlanarの50mmF1.4、85mmF1.4と並んで大好きなレンズです。
このレンズはオールドレンズが現代レンズに向かっていく中で一つのマイルストーンとなるレンズの一つと言っても過言ではない名レンズで、Carl Zeissとしてもかなり気合を入れて作ったのではないでしょうか。
ガラスと金属の塊感はPlanar 85mmと並び所有する感動を与えてくれます。
このレンズと同じDistagon 35mm F1.4のレンズはSONY Eマウント用やCosinaの一眼レフ用、ZMマウント用、ほかにRolliflex用HFTなどがあります。
どのレンズもそれぞれ魅力がありますが、このレンズにはこのレンズならではの魅力があります。
独特のクセはありつつも安定感抜群で近接撮影でもバッチリですし、実用性最高なオールドレンズとして大変おすすめです。
定番のPlanar 50mm F1.4、85mm F1.4を買ったあとに次のレンズに迷っているのならこのレンズはその回答になるかもしれませんよ。